「シャネル」で始まり「ルイ・ヴィトン」で幕引きの最終日、鼻腔に残る
パリコレ最終日は朝の「シャネル(CHANEL)」に始まり、夜の「ルイ・ヴィトン(LOUIIS VUITTON)」で終わるのがお決まりです。そしてまだまだ展示会もラッシュ。2020年春夏のムードが見えてきました。
「シャネル(CHANEL)」は、ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)による初のレディ・トゥ・ウエアのコレクションでした。大掛かりなセットはカンボン通りの「シャネル」のアトリエから見える屋根の上の風景だそう。ヴィルジニーになり、路線ががらりと変わった訳ではなく「シャネル」はどこまでも「シャネル」ですが、これまでより少しリラックスしていてリアル。だからか、モデル自身の個性が見えてきます。ポケットに手を突っ込んで歩くウォーキングが象徴的です。ユーチューバー乱入事件の現場は日本エリアからは残念ながら見えませんでした。
「カイダン・エディションズ(KAIDAN EDITIONS)」に見るネオンカラーや、パンツスーツは今季のトレンドのひとつ。デザイナーの2人はトレンドを意識するタイプではありませんが、勢いがあるブランドは結果的にトレンドのど真ん中にいることがしばしばあります。スニーカーに目を凝らすと、ん?「アシックス(ASICS)」?どうやらコラボではないようです。
「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」の展示会の一角では、若き職人たちが刺しゅうのデモンストレーションをしており、「どうぞ良ければ座って、あなたも刺しゅうをしてみて」と誘われ、座って5針ほど刺しました。職人と聞くと、白衣を着た年配の人を想像しがちですが、彼女たちを見るとイメージが覆されますよね。
下手ですみません、でも無心になれて楽しい!と短いながらもその時間を堪能した5針の間に彼女たちに話を聞きました。マックイーンのアトリエには刺しゅう専門のチームがあり19人が所属。彼らはそのメンバーだそう。ひとりが「刺しゅうをするのが大好き。マックイーンは英国のファッションブランドの中で一番刺しゅうにこだわっているから選んだ職場に選んだの」と教えてくれました。ショーに登場した黒い糸で刺しゅうをしたリネンのドレス(写真)はアトリエスタッフ全員が少しずつ刺しゅうをして完成したとか。「心がひとつになった」とは別の女性の談。いい話です。
ショー会場ではたいがい、国ごとに座席のエリアが分かれています。「ミュウミュウ(MIU MIU)」の会場は、日本エリアの正面がイギリスエリア。お見合いみたいで面白いので写真を撮りました。イギリス版「ヴォーグ(VOGUE)のエドワード・エニンフル(Edward Enninful)編集長やジャーナリストのスージー・メンケス(Suzy Menkes)の姿が見えますね。あっちから同じように見えてるのだろうな~。
「セリーヌ(CELINE)」は、エディ・スリマン(Hedi Slimane)=アーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターによる香水をリッツ パリでお披露目しました。その場での写真撮影はNGだったのでいただいたミニボトルをホテルの部屋で撮影。エディらしいクラシックなボトルに入った9種類の香りはすべてエディ自身の記憶に由来するそうで、そこにマーケティングはナシ、だそう。だからひとつひとつにストーリーがあります。私が直感で選んだのは、エディが20歳の時に過ごしたパリの思い出の香り。パウダリーで同時にさわやかです。それにしても9種類同時発売とは大胆ですね。
「ラコステ(LACOSTE)」はパリ中心から少し離れたテニスコートがショー会場に。コートではプロ選手が試合を行っているリアルな演出。「ラコステ」と言えばテニスですからね!ブランドのルーツやコアバリューが明確なブランドが強い、と最近つくづく思います。イギリス人女性のルイーズ・トロッター(Louise Trotter)がクリエイティブ・ディレクターに就任してからの「ラコステ」は、ジェンダーレスでスポーティー、そして時々キャッチーなデザインで勢いがあります。
さあ、オオトリの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」です。定休日のルーブル美術館をドカンと使うのが最近の「ルイ・ヴィトン」のショーで、資本力を見せつけます。そしてゲストがとにかく華やか。入口でお騒がせユーチューバーに足首をつかまれるというアクシデントに見舞われたジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)とジェシカ・ビール(Jessica Biel)夫婦はじめ、韓国のイッジ(ITZY)や日本からはローラの姿も。
登場したアクセサリーが可愛かったので、翌日の展示会で撮った写真も載せちゃえ!カセットテープをプリントしたバッグなどフォトジェニックなアイテムが揃っていました。
パリから出国数時間前、日本の若者が2人、訪ねてきてくれました。クリエイターの強谷(すねや)鮎美さんと、アトリエ「ラフトワークス」の大坪研二さん。2人はエチオピアにほれ込み、現地の織物やコットンの工場に自力で通って関係性を築いている最中とのこと。来年にはそのネットワークを使ったブランドを立ち上げるそうです。
エチオピアのファッションは今のところ民族衣装が中心で、そこに中国製の大量生産の商品がどんどん入ってきて、現地の若者は危機感を感じているとか。2人はエチオピアの若者たちと新しいファッションのムーブメントを起こそうとしています。すごいね!大切なことは発注元と作り手が価値をシェアしつながることと語る2人。今回のパリコレではサステイナブルなメッセージをたくさん受け取りましたが、見てきた点と点がつながり未来が見えてくるような話でした。頑張れ!
途中で挫折するかもと思いつつ始めたパリコレ日記も最終日までたどり着くことができました。これも一重にお付き合いいただいた皆様と日夜情報を受け止めてくれた日本のスタッフのおかげです。ありがとうございました!さあ、来週は東京コレクションですよ!